地球環境に迫る危機がかつてないほど深刻になった現代に、井上織衣は、人と環境の複雑に絡み合う混濁した関わりを私たちに思考させる。
遥か遠い昔から、小宇宙と大宇宙、有形無形の万物が創り続けてきた神秘的なエネルギーの集塊、つまり生命を、井上は称賛と敬意を持って再解釈、表現することによって、私たちとこの世界のつながりを問いかける。
多様な可能性の芽生えを描きながら、井上の詩的かつ夢幻的なヴィジョンは、私たちの感覚を揺さぶり、イマジネーションを刺激する。すなわちそれは、はっきりと眼にすることや知覚することのできない世界へといざなうだろう。
井上織衣 Orie Inoue
1983年埼玉出身、ディジョン在住。2008年に女子美術大学大学院美術研究科修了。2011年に大村文子基金女子美パリ賞を受賞し、2012年より活動の拠点をフランスに移す。とりわけ有機物を用い、ドローイング、立体、インスタレーションなど広範な表現を通して、生命の神秘に関する研究を続ける。これまでに、パリ、東京、ロンドン、ブリュッセル、バーゼル、ミュンヘンなどで作品を発表している。