【会 期】2026年7月10日(金)- 7月26日(日)
【休 廊】月火水木
【時 間】13:00ー18:00
【場 所】gallery neo_/ Senshu
〒305-0047 茨城県つくば市千現1丁目23-4マイコーポ二の宮101
https://goo.gl/maps/eM96mwgMjcfLFvdW6
【入 場】無料
私は路上の風景を通して、自分と生まれ育った沖縄を表現したいと思っています。
私の生まれ育った沖縄には〝世替わり〟という概念があります。
15世紀以降琉球王朝が成立してから唐やアジア諸国と海洋貿易で栄えた唐の世。
1879年に薩摩藩による琉球処分以降を大和世。
1945年以降をアメリカ占領下のアメリカ世。
1972年以降に再び大和世。
沖縄の言葉、風景、文化、法、通貨等は他民族間の政治的綱引きによって、〝世替わり〟の都度他者によって書き換えられてきました。しかし私は自身のルーツやアイデンティティーは時代や政治的機運によって翻弄されたり、パスポートや国家によって紐づけ、恣意的に左右されるものではないと考えています。
先人のウチナーンチュ達は幾多の〝世替わり〟の体験談や人々の暮らしを、民謡として唄に込めて子や孫の世代に語り継いでいきました。ウチナーンチュは三線の音色と共に唄うことで、先人達が歩んできた、その時々の風景を、思い出したり、想像することができたのだと思います。
しかし今の自分には楽器が弾いたり、沖縄の行事に参加することが出来ません。20年近く「路上」をテーマに制作してきた今の自分に出来ることは、沖縄で過ごしてきた路上の風景や、口伝や歴史を通して、自分自身のルーツやアイデンティティの核となっているものを自分なりの制作物として表現出来たらと考えています。
今回のシリーズはRust paintingと称してその殆どがトタンを使ったものになります。
焦土と化した戦後沖縄では、米軍資材のトタンが普及され、住民の間でトタンを使ったバラック小屋が急速に広がりました。台風の通り道である沖縄では塩害の影響も大きく、強い陽射しに照らされた錆色のバラックの風景は私にとっての象徴的な路上の風景の一つです。
上原耕生

gallery neo_/Senshuでは、美術家 上原耕生(ウエハラコウオ)の個展「路上の記憶、滲む暮らし」を開催する運びとなりました。
上原耕生は、約20年にわたり「路上」を主題として制作を続けてきました。その視線は単なる都市風景の記録ではなく、自身の生まれ育った沖縄と、そこに生きる人々の記憶や歴史、そのアイデンティティの在りかを探る営みへと向けられています。
沖縄では、15世紀以降、琉球王朝としてアジアや唐との交易で栄えた時代を「唐の世」。1879年、薩摩藩と明治政府によって事実上王朝の終焉となった琉球処分以降を「大和世」。1945年の沖縄戦から戦後27年間のアメリカ統治を「アメリカ世」。1872年から、日本復帰以降を「大和世」と呼びます。
人々の生活文化を塗り替えるこういった政治体制の変化を「世替わり」と呼び、体制が変わるたびに、言語、制度、経済、風景、さらには人々の価値観までもが外部から更新されてきました。上原は、この反復される歴史的な書き換えのなかに、沖縄という土地が抱える複層的な時間性を見出そうとします。しかし一方で、アイデンティティとは国家や制度によって一義的に規定されるものではなく、むしろそれは、個人の身体感覚や記憶、土地との関係性のなかに潜在し、表象される以前の層として存在しています。
上原にとって路上とは、その不可視の層が痕跡として立ち現れる場なのではないでしょうか。
本展で発表される《Rust Paintingー錆絵》シリーズは、主にトタンを支持体として制作されます。戦後沖縄に流入した米軍由来のトタンは、焼け野原となった土地にバラックの材料として急速に普及し、人々の生活基盤を支える身近な素材となりました。同時に、強い日差しや塩害によって腐食したその表面は、沖縄の風景を特徴づける視覚的要素でもあります。
上原はトタンを単なる素材としてではなく、歴史的経験が刻印されたメディウムとして扱います。そこに現れる錆は劣化の痕跡であると同時に、時間の堆積であり、複数の「世」が重なり合う地層でもあります。作品に描かれる路上の風景は、記憶と歴史、現実と想像が交差する場として構築されます。
沖縄の人々によって語り継がれてきた民謡や口承を通して時代の経験を、上原は現代における視覚表現へと接続します。路上に残された痕跡を拾い上げる行為は、失われつつある風景を保存するためではなく、その背後に潜む歴史の層や語られなかった記憶を現在へと呼び起こします。
上原耕生の作品は、沖縄をひとつの固定された文化的アイデンティティとして提示するのではなく、絶えず更新され、交渉され続ける場として捉えます。そしてその視点は、沖縄固有の歴史を出発点としながらも、国家、領土、帰属をめぐる現代的な問いへと開かれています。本展は上原耕生の個人的な原風景の展示であると同時に、歴史と記憶が交錯する空間となりうるでしょう。この機会にぜひご高覧いただけますと幸いです。

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上原耕生 Kouo Uehara
1982年沖縄生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。故郷の「沖縄」や「精神科病院」、「路上」をテーマに団地の壁や商店街の外壁、廃校となった学校などで制作・発表している。2011年からアートスタッフとして茨城県にある袋田病院(精神科医に勤務。2013年から「袋田病院アートフェスタ」のディレクションを勤める。
主な個展
2010年 拝借景/取手市
2017年「ON THE STREET」/取手市
2025年「路上の記憶、滲む暮らし」/gallery cafe ULTRA 尾道
精神科病院での活動
2018年 TURN展出展/東京都美術館
2024年 精神科医学術大会にて学術会長賞受賞
表題「袋田病院アートフェスタ」/仙台
2025年 袋田病院×フィフスシーズンAIR成果展示
/大阪関西万博ギャラリーイースト
【展示に関するお問い合わせ】
mail:info@neotsukuba.com







