【会 期】2023年12月8日(金)- 12月24日(土)
【休 廊】月火水木
【時 間】13:00-17:00
【場 所】gallery neo_/ Senshu (旧:G’s Gallery Tsukuba)
〒305-0047 茨城県つくば市千現1丁目23-4マイコーポ二の宮101
https://goo.gl/maps/eM96mwgMjcfLFvdW6
【入 場】無料
この度gallery neo_/Senshuでは、1977年よりつくばを拠点とし、写真というメディアを通しつくばと対峙してきたフォトグラファー 齋藤さだむ氏による写真展を開催する運びとなりました。
本展は、氏の代表シリーズのひとつでもある「Incomplete City-Space」をはじめとするpost・cardの作品を中心に、万博前から現在に至るまでの”都市としてのつくば”を記録したものを展開します。
ぜひこの機会にご高覧いただけますと幸いです。
【会期中の関連イベント】
12月16日(土)16時から ※参加自由
タイトル :創造することの欲求とつくば
──劇団「踊母会」×「AKUAKU」公開企画会議
つくば市を拠点に活動する劇団「踊母会」が、2024年2月につくばで上演する作品についての公開企画会議を行います。
このイベントは『ARCHIVE AKUAKU』の一環として開かれます。1970年〜2000年にこの地の文化拠点を担った「CREATIVE HOUSE AKUAKU」の主宰 野口修氏、創世記のメンバー 淺野幸彦氏をお招きし、1979年〜2000年のつくばの演劇事情、社会の様子、AKUAKUの活動について聞きながら、踊母会がいまのつくばにあるべき作品を生み出すための企画会議を行います。
踊る母の会と書いて「踊母会(ようぼかい)」。つくば市を拠点に活動する劇団。小劇場が存在しない街・つくばで、古着屋や写真店などを間借りしてその店内を舞台に見立てた演劇を制作、上演する。上演が行われる一日は、貸切の店内に飲食や古書などの出店が集められ、演劇だけでなくいくつもの楽しみが詰まったイベントとして開かれる。これまでの主な公演(イベント)に『カニババ』(2023)、『ソクセキ』(2023)がある。
Instagram : @youbo_kai
ー透視図を培養するー
大日方欣一
「Incomplete City-Space」の写真に無いものを数えあげれば、じつに沢山のものがそこには無いと容易に指摘できる。 人間がいない(点景としてしか画面にあらわれない)。家屋や建築物の内側の空間がない。農業や商業もないと言えるかも知れないし、対象を間近に手にとるように眺める仕草や視界を遮るように立ちはだかった事物の表情といったものも、ほとんど目の当たりにすることはできない。ひとつの都市の総体が、明らかに写真家の主題として選択され、ヴァリエーションに富んだとらえ方がなされているにもかかわらず。 私たちはこれまで、東京やパリ、ニューヨークばかりではない数多くの都市について、そのぶ厚い現実へ潜りこみ、 さまざまな切開を試みた写真家たちの、かけがえのない「都市の肖像」をあれこれと眺めてきた。それらにいろいろの濃淡で滲みこんでいた生の痕跡に、ずいぶん打ち顫えさせられてきた。人間たちが横切り、日々のなりわいが垣間見られ、物のありようを親しくみつめなおしていけるような画面を見た。私たちは一時ではあれ、その都市の内側に 滞留することを許されているように感じた。
だが、「Incomplete City-Space」を前にした時に始まる体験は、それとはどこか隔たったものだ。しばしば繊細なウィットを感じさせもするカメラのポジションを通して私たちが手に入れるものは、むしろ現実の “都市” の文脈から 分離した、イメージの漂着物たちのようにも見えるときがある。また一方で、どの写真からも薄い鉱物めいた輝きが 仄見えてくる、という印象が確実にある。それは写真家の視力によってとらえられた、“都市” の未成状態の輝きであるかも知れない。どちらの印象も捨てがたいものとしてある。
今年 1 月から 2 月にかけて青山・PS ギャラリーでひらかれた同じシリーズによる個展では、開場の入り口に朝焼けの雲を遠望した一点がかかげられていたが、それはもしかすると写真家の位相を暗示的に語っていたのかも知れない。 具体的なひとつの都市をフィールドとし、その変容過程を捉えていくことを明言してもいる彼が、まずもって雲という浮遊物に眼差しを託すること。それは、さりげない身振りであるには違いない。しかし、そこに都市を内側から切開 していくやり方とは異なった、自身の方法の表明を聴きとることも可能なはずだ。「Incomplete City-Space」にあっては、雲も都市の一部であり、都市空間は雲に似ている。気圧の配置図がたえず形を変えていくものであるように、 街区の透視図も浮遊状態にある。写真家は、カメラで投網をうつみたいに、都市のほうぼうで眼差しをなげかけ、そこに透視図が培養されてくるのを見ようとする。画面のところどころに杭や標識が穿たれ、遠いライトの光が位置関係をほのめかし、建築物が少しずつ定位されていく。この作業は何度も繰り返される。なぜなら、透視図を完成することではなく、透視図の培養にたちあうことが「Incomplete City-Space」の方法なのだからだ。
「Incomplete City-Space」の試みが具体的にフィールドとしているのは筑波研究学園都市であり、この人工都市の特殊なあり方が写真家の方法を大きく決定づけていると言って、たぶん間違いではない。都市のそこここに未成な部分、 未成なまま朽ち果ててしまうかもしれない部分が重なりあっていればこそ、その試みは続けられていくのだと思う。 それは、今回のような展示という形式で公表されもするであろうし、ポスト・カードというメディアにのせて、この都市の外側へも送りつづけられていくはずである。 エキスポ・センターに展示されるもうひとつのシリーズ「Transient Space」については、言葉を差し控えたい。
’ 85 科学万博の建設から解体までを見せる一連の写真をざっと眺めわたして、そこで何がおこっていたのか考えてみるのだが、それはちょっと言いようがない感じで、言葉にするにはひどい苦心を味わわねばならぬであろうからだ。 自分自身のための手がかりとして、吉本隆明氏の文章を引用しておく。これは、吉本氏の、やはり’ 85 年筑波での体験から発されたものであるに違いないので。「わたしたちは、ある種の人工都市で、映像と映像の模写と言葉とが飛び交うビルの内装の場所から、連れだって静寂な夜の外気のなかに出た。するといままで濃密に飛び交っていた映像の技術と技芸の世界は、即座に廃墟のような記憶に変り、やがてすぐに忘却作用が内部で蝕みはじめた。わたしたちは そのとき、超現実の夢遊状態のほかに、原現実(現実以前)の夢遊状態もあることを知った。わたしたちはその瞬間だけ、 動物状態になっていたのだ。」(「言葉からの触手」)
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齋藤さだむ Sadamu Saito
https://sadamsaito.com/
1948 長野県佐久市に生まれる
1971 桑沢デザイン研究所・写真研究科卒業
1977 筑波大学芸術学系技官赴任、以後つくばを拠点とする
1990 workshops SA/齋藤さだむ写真事務所 設立
主な個展
1988 “Incomplete City-Space” PSギャラリー(東京)
1988 “Transient+Incomplete City-Space” つくばエキスポセンター(つくば)
1989 “TRANSIT ZONE” ギャラリーFROG(東京)
1996 “草木1996”プラザギャラリー(東京)
2012 “不在の光景”いわき市立美術館(いわき)
2013 “IMAJIN THE FUTURE―齋藤さだむ写真展”筑波大学(つくば)
2019 “Feel from yesterday”ギャラリーしえる(水戸)
2020 “二ツ島”茨城県天津記念五浦美術館(北茨城)
主なグループ展
1993 “写真1993展”つくば美術館(つくば)
1998 “写真の現在・距離の不在”東京国立近代美術館フィルムセンター(東京)
1998 “写真の未来学”EPSITE IMAGING GALLERY(東京)
2012.3 “きみは3.11を見たか”旧日本銀行広島支店(広島)
2012.5 “ひとのあかし” Gallery MEMORIES(つくば)
2012.8 “SORA・福島現代美術ビエンナーレ”福島空港(福島)
2013 “影像2013” 世田谷美術館(東京)
2019 “光陰矢の如し”東京アートミュージアム(東京)
2021 “東日本大震災から10年-復興への取り組みと美術家たち”茨城県立近代美術館(水戸)
【展示に関するお問い合わせ】mail:info@neotsukuba.com